きずなメール・プロジェクト 代表のblog

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「国連・子どもの権利委員会審査と日本政府への勧告(総括所見)の検討」の共有

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(2019年1月17日の子どもの権利委員会。国連のWEB TVより)

 

「法」は書き言葉による合意です(不文憲法もありますが)。多数が合意した書き言葉は現実を動かします。今の日本の子育てや児童福祉に関する考え方は、国連の「子どもの権利に関する条約」(United Nations Convention on the Rights of the Child)という書き言葉の影響を受けています。

 

 「国連・子どもの権利委員会審査と日本政府への勧告(総括所見)の検討」という講座に参加してきました。具体的にどう影響されているかを実感できた講座でした。

 

「子どもの権利委員会」の背景を説明します。

 

日本は1989年、「子どもの権利に関する条約」に「批准」しました。「批准」すると「その条約が目指す世界観に向けて、必要なことをやっています」という説明責任が生じます。条約に法的拘束力はないですが、世界観に同意したことになるので、それなりの重みがあります。

 

批准国は「国連・子どもの権利委員委員会」(Committee on the Rights of Children
 略称CRC)に定期的に、自国において子どもの権利が守られているか、法や制度が整っているかを報告し、審査を受けます。報告は政府が行い、対してCRCは「総括所見」を出して「勧告」を行います。

 

講座は、直近の2019年1月16日、17日に行われたばかりの「日本の第4回・第5回統合定期報告書に関する総括所見」の共有を目的としたものです。講師の平野裕二さんは子どもの権利活動家・翻訳家として批准時からCRC報告書の全訳を手がけておられ(これ自体が偉業)、今回の総括初見の翻訳も氏のサイトで読むことができます。

 

子どもの権利員会:総括所見:日本(第4~5回)

www26.atwiki.jp

ざっと見ただけでも、子どもに関する日本の社会問題について網羅的に議論されていることがわかります。子どもの貧困、体罰、JKビジネスという言葉も出てきます。日本ではなく、国連ジュネーブ事務局で議論されている内容です。

 

国連は情報公開が進んでいて、WEB TV の録画で今回の委員会のやり取りを見ることができます。しかも日本語で!

 

1月16日分

webtv.un.org

1月17日

webtv.un.org

16日録画の1時間48分くらいで、今日本でしきりに報道されている「懲戒権」に関する話が出ています。1時間51分くらいには「子育て世代包括支援センター」の語も。遠いジュネーブでの議論が、僕らの生活に影響していることがわかります。

 

以下、CRCについて箇条書き。 

 

* * *

CRCは年3回、ジュネーブで開かれている。
CRCの委員は世界各国の20人程度で構成され、大半は法律家。教育、ソーシャルワークの専門家もいる。
・日本からは大谷美紀子弁護士が2016年、日本人で初めて委員に選出された。委員は、自国の審査には関与しない。
・1/16,17に行った日本政府代表団は28人で構成されている。
・「勧告」に法的拘束力はないが「誠実応答義務」はある。
・日本は批准後5回、報告への審査を受けている。1998年、2004年、2010年、2016年、2017年。
・2010年の第3回審査の勧告では、子どもの貧困についても言及された。他の先進国でも子どもの貧困が生じているという国際的な背景があった。
・今回の総括所見で「緊急の措置がとられなければならない」6つの分野のひとつとして「体罰」が取り上げられている。

* * *

 

総括所見では、子どもの権利条約の核である「子どもの最善の利益」(the best interests of the child)という語が繰り返し出てきます。また「意見表明権」についても。子どもが自分の意思を表すのは、子どもの生来の権利という、懲戒や体罰とは真逆の考え方です。

 

ここでの議論は、日本の児童福祉関連の法律や指針、要綱、政策にダイレクトに反映されます。2016年の児童福祉法改正も、こうした流れのひとつのようです。

 

2019年3月10日現在、国会では体罰禁止のために民法の「懲戒権」の見直しが検討され始めました。メディアでは千葉の小4女児死亡事件がきっかけということになっていますが、CRC総括所見の影響も大きいのではないでしょうか。


【参考】

「子どもの最善の利益」「懲戒権」について、過去ブログでも触れています。

ameblo.jp 

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