きずなメール・プロジェクト 代表のblog

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読書会【津富宏・細川甚孝・松原明とともに読むポランニー「大転換」】参加メモ

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生まれて初めて「読書会」なるものに参加しております。今日はその2回目。読むのはカール・ポランニー著「大転換」(The Great Transfomation)。弟、マイケル・ポランニーは「暗黙知」「創発」概念の開発者。ポランニー兄弟のことは経営学ドラッカーの著書「傍観者の時代」で知って、兄の方の歴史的名著を、僕がその知見を激しく参考にさせていただいている方々が読み込んでいくということで、参加させていただきました。

 

[新訳]大転換

[新訳]大転換

 

 

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メモの前に、第1回目で紹介されたポランニーの核となる考え方について。ポランニーは社会構造を、下記の4つの要素でモデル化しました。

 

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これらを現在に、大雑把に当てはめると、

①互酬  助け合い、協力。NPO的な要素
②再配分 政府
③家政  家族、家庭、血縁等
④交換       市場、企業とそのマーケット

 

この考え方は、僕を大変勇気づけてくれるものでした。

 

今や④が社会を覆っていますが、人間はそれ以前ずーっと①②③でやってきた。④もあったけど、あくまで要素の一つだった。それが④が過度に拡大するようになり、本来④に乗るべきでない土地(自然)や人やまで④で交換されるようになった。そうなるとすべてが競争になって格差や貧困は必然的に起きる、という理路。

 

実感値として納得できます。③にある子育てや介護は④で丸ごと外注なんてできないし、するべきではないのは、すでに誰もがわかっていることではないでしょうか。卑近な例ですが、きずなメールがなぜ課金や広告モデルをやらなかったか振り返ってみると、まさに④で単なる交換の対象になって擦り切れるのを避けたかったからですし。

 

以下、例によって断片的な個人メモですが、ぜひ団体のスタッフやステークホルダーの方々にフィードバックしたい、そのことにが団体内外の議論のきっかけにもなるということで、スピード優先でアウトプットしました。 ★=感想。

 

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(今日の講師はNPO法人シーズ松原さん)
・内容としては、新自由主義にどう対抗していくか、という話。
・経済的自由主義は、すべてを市場が自己調整する「自己調整市場」というユートピア幻想。
・経済的自由主義が凄い勢いで広まっていく様を「悪魔のひき臼」という例えで表した。
・序文は2001年ノーベル経済学賞受賞のジョセフ・E・スティグリッツ
・第2章はもっとも手強い。
・当時は経済学の本としては認められていなかった。世に広げたのは栗本慎一郎。今は経済学から注目されている。
・最近出た「父が娘に語る美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。」は基本、ポランニー学説。 

 

 ・新自由主義と戦うのに、ポランニー理論は有益かというと、「有益である」との結論。
・ポランニーの自由は「倫理的自由」。これは少ない。
新自由主義勃興は1970年台後半。サッチャーレーガン
新自由主義はシューペンター、ハイエク。サプライサイドエコノミー。
ハイエク「隷属への道」はサッチャーの愛読書だった。
・ポランニーはミーゼス、ハイエクを否定していた。
・経済の自由主義の3タイプ。
  古典的的自由主義は「ほっとく」「まかせる」
  ケインズ自由主義「ニューリベラリズム」あ「需要創造」
  新自由主義「市場は最高」
フーコーは「新自由主義は競争原理で社会を統治する。個人主義にしていく。」
フーコーが言ったというだけで、なぜか説得力を感じるの気のせい?
・政治における新自由主義は「規制緩和」「民営化」。サッチャーは「福祉を切れ」。
サッチャー「社会は存在しない。存在しているのは個人」という思想。
★嫌だな。
・1870年「限界革命」。でもポランニーの本には出てこない。
・ポランニーはマルクス主義の用語を使わない。
・「自己調整市場」→「需給のバランスで自動的に価格が決まる」という考え方をポランニーは採用していない。
・ポランニーは戦い方を語っている。
・ミーゼス、リップマンの陰謀論
・19世紀、企業でさえも経済的自由主義と戦っていた。
★企業=悪ではない。企業にも役割がある。そのことをポランニーはきっちり述べている。
・修正社会自由主義
マーク・トウェイン「歴史は繰り返さないが、韻を踏む」
★まるでラップのライム
OECDで幸福度「Better Life Index: BLI」を指標にしたのはスティーグリッツとアマルティア・セン
・この指標はSDGsの大本でもある。
・スティーグリッツは「市場は不完全」を証明してノーベル賞新自由主義批判の最先鋒。
・日本でどうするか? 皆の問題にして、皆で取り組む。「個人の問題」にすると、民主主義は弱体化する。

 

(津富宏さんコメント)
・諸階級が全部同時に取り組む、ということろが大事では。
・北欧の仕組みは、ある意見が一定数になったら、必ず国の仕組みに統合されていく。草の根から意見が上がる。国全体が協同組合のような感じ。
・北欧は高福祉、高負担といわれるが、入り口が違っていて、教育で価値観を統一した結果、高福祉、高負担を選んでいる、というのが実際。キーは「教育」。

 

(松原さん)
・戦略論で行くと「将棋型」より「囲碁型」で。少しずつ「賛成」を作っていく。社会的な流れを作っていく。
・コモンズ論/アソシエーション論という二分法。
  コモンズ論     価値観でつながる
            「共有」=メンバーシップ限定→協同組合
  アソシエーション論 違う価値観もでつながる
            「総有」=社会全体で持っている。
・「総有」はゲルマンの概念。スウェーデンはもともとゲルマン民族
NPOの資金源。「寄付」と「負担金」は異なる。負担金は事業の分担。戻ってこないけど、目的は達成できる。ある共通の価値を実現するために負担する。パタナーリズムを廃するやり方。
★僕はwin-win は幻想で、lose-lose のほうが実際ではないかと。「失う」というより、「場に差し出す」感じ。
・どんな価値を実現するのか、という議論が足りていない。
・公的なものの価値とは協力、パートナーシップ!!
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以上です。最後に「!!」が入ってしまいましたが、よい学問や知見は人を元気にします! 唐突ですが、オーケストラの音は大好きで、あれこそ「多様な楽器と協力しあって素晴らしいものを作る」わかりやすい例ではないでしょうか。なので「オーケストラのような仕事をしよう!」思うとともに「すでに弦楽四重奏くらいにはなっているかも??」と思いつつのGW初日でした。

 

皆様よい休日を。