市民アドボカシー連盟の会員限定勉強会「司法から国を変える~1人でもできる憲法訴訟入門」に行ってきました。
講師の弁護士・作花知志(さっかともし)さんは、選択的夫婦別姓制度を求めてサイボウズ株式会社青野慶久社長とともに「憲法訴訟」をしておられます。最近著書を上梓されました。
いつもならスタッフ向けのメモを共有するところですが、氏のブログを読み始めたら面白いので、そちらも含めて共有します。
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社会を変化させるために「法律を変える」方法として、議会以外に「裁判」もあると知りました。原理的には、たった一人でも法律を変えられます。この可能性について触れた、アメリカ最高長官の言葉を、氏のブログから引用します。
「私が法律家としての活動で,一番感銘を受けたことは,弁護士としてアメリカ合衆国を被告とした訴訟の原告代理人を務めた時のことであった。
アメリカは,その有する武力では世界中のいかなる国をも屈服させることができる国である。
しかしながら,裁判所で,法を根拠として,論理を重ねることで,そのアメリカの立法上,行政上の過誤を追求すると,世界一の武力を誇る国が,単なる一私人に負けるのである。」(ジョン・ロバーツ(第17代アメリカ合衆国連邦最高裁判所長官)の就任の際のインタビューより)
世界最強の武力を持った国でも、一人の人間の論理=言葉に、負ける可能性がある。多数派の意見に対し、少数派の意見が通る可能性が残されている。ただ多数決では終わらない、民主主義の長所ですね。
日本においては「違憲立法審査権」という形で仕組み化されています。再び氏のブログより。
国会で成立する法律が,社会の多数派の立場からの「あるべき社会の実現」であるとすれば,裁判所による違憲立法審査権の行使は,社会の少数派の立場からの「あるべき社会の実現」です。たった1人の私人でも,裁判所で論理と証拠を積み重ねることで,国を変えることができるのです。それが法の支配であり,裁判所による違憲立法審査権なのです。
氏は実際この仕組みで、「女性の再婚禁止期間において、100日を超える部分は違憲である」という最高裁の違憲判決を、一人で勝ち取られました。
勉強会タイトル「1人でもできる憲法訴訟入門」は比喩ではなかったのです。凄すぎです。
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他、勉強会での特に印象深かった発言を。
・著書「わたしの宮沢賢治」とは「正義とはなんだ?」の問い。
・時代遅れの定義を変えていくのが法律家の仕事。
・法律は、社会における正義や公平を実現する“手段”。目的ではない。
・法を支えている目に見えない存在にアプローチすることが大事。
・人権条約は、拘束力は無いが“立法事実”としての機能があり、法律が変わる。
(「子どもの権利条約」により、児童福祉法や日本の民法の懲戒権が変わるのも、これだろうか?)
現在、氏が取り組んでおられるissueとして上がったキーワードも。
①夫婦別姓
②女性の再婚禁止期間の廃止
③離婚後共同親権
④無戸籍児
③は、児童虐待防止からも重要度の高いissue なので、団体の中でもしっかり学びと情報を共有していきたいところです。
僕にとって「正義」は、大事だけど、簡単に人を狂わせるようなところもあり、怖さを感じる言葉です。でも作花さんが語る「正義」は、とてもやわらかくて靭やかに感じられました。
また、「詩」の言葉と「法」の言葉が同じテーブルで語られるのは寡聞にして知りませんが、氏は宮沢賢治を通してこれを実践されているように感じました。
作花さんのブログ、Twitterもぜひご参考に。