きずなメール・プロジェクト 代表のblog

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ジェーン・ダリンプル氏来日記念講演会【イギリスに学ぶー子ども・若者のアドボカシー】 参加メモ

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子どものことは、まず子どもに直接聞いてみる。

 

考えてみれば当たり前の話なのですが、僕はなかなかこれができていません。最も大きな理由は、そもそも僕自身が子どもの頃、自分の切実な思いを、大人に聞いてもらった経験がないからです。経験がないから再現できない。同時に、経験はないのに、その必要は感じている。この不思議な矛盾はどこから来るのかを良く考えています。

 

とまれ、僕らは経験がないことも、知識として学ぶことができます。その後、僕は、「大人が子どもの話や気持ちを聞く/受け止める」とは「まだ言葉にならない未分化な子どもの情動に、大人が適切な形(主に言葉)を与えることで社会化し、社会の構成メンバーに招き入れるプロセス」であるとを知りました。

 

* * *


日本でアドボカシーというと「政策提言」ですが、本来は「弁護」「代弁」の意味です。市民の声を「代弁」した提案なので「政策提言」。児童福祉分野でアドボカシーというと「子どもの気持ちを代弁すること」、アドボケイトは「子どもの代弁者」になります。日本でも、子どもの権利条約第12条「意見表明権」を受けて、児童福祉審議会に「意見表明支援員」としてアドボケイトを置く取り組みも出てきています。

 

「お父さんからぼうりょくをうけています」と学校のアンケートに書いた千葉県野田市の女の子のメッセージは、アドボケイトがいればどうにかなったかもしれません。

 

イギリスは子どものアドボカシーとアドボケイトの先進国。そのイギリスのアドボカシー研究の第一人者の来日講演があると知って、行ってきました。場所はサイボウズ株式会社東京オフィス。

 

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以下、いつものようにスタッフへの情報共有として「無いよりはあったほうがマシ」という個人メモ。★は僕の感想です。

 

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●栄留里美先生/大分大学福祉健康科学部助教 <専門分野> 児童福祉
児童虐待の現場にいたが、子どもの声を聞いたことなかった。
・イギリスにいったら、ソーシャルワークの現場に子どもがいた。アドボケイトする大人とともに。
・現在、子どもの権利条約12条意見表明権うけて、アドボケイト(代弁者)という文言が行政の文書に反映されている。
・アドボカシーの本義は「声を上げる」
・今日はソーシャルワーカーデイ。
・子どもの苦情申し立て、日本は児童福祉審議会が受けることになっているが、実際の申し立ては年間5件。
・アドボケイト、イギリスでは360時間くらいの訓練受ける。
・名古屋では、学習支援にアドボケイトが参加する取り組みある。

 

●ジェーン・ダリンプル(Jane Dalrymple)先生
西イングランド大学・オープン大学 アソシエイトレクチャラー、アドボケイトトレーナー

・歌の紹介。リア・ミシェル「どんなことも可能」
・希望の歌。大変な状況にある子どもに変化をもたらす歌だと思う。
・アドボカシーの歴史について。
・イギリスの子どもたちの状況をアドボカシーが変えたといえる。完全ではないけど。
・2019年子ども委員会のレポートで、アドボカシーは続けて行かなければならない、と出ている。
・日本とイギリス、子どもに関するは文化は異なるけど。互いに学ぶことができる。
・イギリスのアドボカシーは、ニュージーランドマオリの人から学んだことも入っている。
・イギリスの例を、全てやるのではなく、いいことだけ学んでほしい。
・どうしてアドボカシーが必要とされたのか。
・イギリスでも日本でも、周辺に押しやられて、声があげられない人がいる。力の関係の中で力を奪われている人がいる。
・大人と子どもも力が異なる。大人は大きな力を持っている。
・大人は力を間違って行使することがある。
・今日の話は、子どもたちの声は尊敬を持って受け止められて、価値を認められるものにする話。
・子どもたちの人生の中で、いろんな大人がいろんな見解を持ってやってくるが、それを子ども自身はどう受け止めるか、どれを選ぶか、という話です。
・子どもたちの人生を決める上で、子どもたち自身の意思を聞く試み。
・大人は子どもは意見を持っていないと判断することがあるが、アドボケイトは子どもは意見を持っているとして、どうやってそれを引き出すか、形にするかの訓練を行う。
・もう一つ重要なのは、大人のほうの態度。「大人がよく知っている」ではなく「子どもたちがよく知っている」という態度に移行すること。
★!
・アドボケイトが優れている、ということではなく、立ち位置の問題。子ども側に立つ。その子の意見をちゃんと子どもに関わる大人に届くようにする。
・アドボケイトは、子どもの意見に賛同する必要はない。その子の意見が他の大人に伝わるように支援する。

・なぜ独立アドボケイトが英国で可能になったか。ここ40年くらいの話。
・子どもたちはよい支援がそろってなかった。
・以前は親が知的障害、精神障害あった場合、アドボケイト必要だった。その協議会ができた。
・もう一つ。子どもが長い期間施設にいる場合の仕組みとしてできてきた。施設養護の子どもの、権利擁護の仕組みとしても発達してきた。
・施設で虐待があった。その調査でわかったのが、子どもの声が聞かれていないことだった。
・親が養育できないのは、子どものせいではない。
・子どもに限らず、社会サービスの自己決定の運動、という流れもあった。
・子どもの権利、今ほど盛り上がっている時はない。
・1997年 ウイリアム・ウッティング氏の調査。施設虐待があることがわかった。その調査で「子どもたちの声を聞けばうまくいく」と。親と離れて暮らしている子どもにアドボカシー必要。
チャレンジカード「異議申し立てカード」がある。
・社会制度全体が、子どもの自己決定を促進する方向。
★!
・社会的養護=行政の養育=国が親になる。
★!

・イギリスは、悪い事件が起こるたびに子どもの意見を聞く、という形で発展してきた。
・1945年デニス。オニール君が養父母のもとで虐待死→1948年子どものケア法が成立。
・子どもを個人として扱うことが重要。
・2000年、クリンビエさん8歳死亡を機に児童保護・虐待防止から「すべての子どもたちに注意を払う」に転換。
★日本も「すべての子どもたちに注意を払う」のは倣うべきと思う。
・大人たちが、若者や子どもへの態度を変えなければならない。「子どもを尊重する」という態度に。
・子どもが、信頼できる大人を見つける、ということが大事。
・子どもは、親に対しても、気持ちを話すことができないこともある。
・私には14歳の孫がいる。彼が私に母親の苦情申し立てをする(笑)。
・大事なの、信頼できる大人がいて、話すことができるということ。

・子どもは「情報と参加」「説明と支援」を求めている。
★これを実践すると、子どもを育む社会制度を説明することになる。教育分野に近い作業。
・子どもは、親が支援を受けているのは見ている。でも支援は、子どもに向けられるべき。
★児童手当とか?

・アドボカシーの文化について
・2019年にアドボカシーについて見直しが行われた。
・子どもの意見は、親とは独立した形で聞かれることがが大事。

・アドボカシーの重要性を構造的(システミック)に理解することがが大事
・ケース・アドボカシーはシステム・アドボカシーに示唆を与え、構造そのものを変化・調整していくことが重要。
・セルフアドボカシーも大事。子ども自身が、自分自身で意見を述べる力。
・言葉で伝えるのが難しい子どもは、絵をつかったり写真を使って自分の意見を伝えることがあった。
★言葉だけがメッセージではない。
・アドボカシーは「急進的」との意見もある。「子どもの声を中心に」というのが、急進的に映るらしい。
・イギリス、財政的な理由による予算削減によりソーシャルワーカーが保守的になっている。

 

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「自分の意見を聞いてもらえる経験」「自分の思いを聞いてもらえる経験」を重ねた子どもは、自然と他人の意見に耳を傾けるようになるでしょう。まず僕自身が、できていないことをできるようになろうと思います。小学生の作文のようではありますが。