きずなメール・プロジェクト 代表のblog

顔と名前を出す人生です。

「おじさん保育園」と「ケア責任」について考えてみた。

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「おじさん」という存在は、もうそれだけで威圧的です。「不機嫌なおじさん」はさらに威圧的です。僕は今53歳ですが、「そこにいるだけで威圧的に映るらしい」ということが自覚できたのは、恥ずかしながら最近。以来「ひとまずにこやかに話す」などを意識して、そのつもり話してようやく周りは「普通」と受け止めてもらえることを理解しました。「おじさんバイアス」に無自覚すぎた僕です涙。



実際、イライラしている中高年男性は多い。「不機嫌なおじさん」は「暴力」の記号でもあるので、昼間の住宅街の公園にただいるだけで不審者として通報されてしまうこともあります。通報される側、する側のどちらかが悪いということではなく、ジェンダー規範自体を変えていくしかありません。

 

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昨年、保育士試験に合格しました。以来、半ば冗談、半ば本気で、「おじさん保育園、やってみようかなー」と言ったりしています。丁寧にいうと、「中高年の男性保育士を主力とした保育園」(女性保育士もいます)です。「おじさんを保育する園」ではありません。

 

言葉には磁力があるので、「おじさん保育園、できるといいなー」とか言っていると、自分でその気になってきます。するとだんだん、イメージが具体化してきます。

 

保育士試験に挑戦したのは、先に試験に合格した妻の「子育て経験あれば半分は常識でなんとかなるので、試しに受けてみれば?」との一言から。同時に、エエカッコしいの自分が、「保育士」という、決してcoolでもhipでもない、幼児のおむつ換えとかご飯を食べさせるとかいうことが抵抗なくできるようになれば、もっといろいろ楽になれるのではとの気持ちもわいてきました。

 

男はその「男性性」、いわゆる「マッチョ」ゆえに、孤独になりやすい。高齢男性の孤立、孤独死はすでに大きな社会課題です。日本は、ジェンダーギャップ指数は下位常連の、先進国とは思えない世界有数の”マッチョ国”なのです。

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ジェンダー・ギャップ指数(2018)上位国及び主な国の順位

そんな中高年男性も、国家が認める「保育士」の資格を取得して、保育園で乳幼児のケアをするという選択肢があれば、変化のきっかけになるし、ジェンダー規範も変わっていくのではないか。と思うマッチョで"俺様"な僕です。

 

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「マッチョ」に対し、「女性性」といえるものの代表が「ケアへの本能」。「ケア」とは、下の世話も含めて、他者を世話すること。「根源的配慮性」(©鯨岡峻先生)、「世話焼き欲」(©三宅秀道先生)という言い方もあります。工業製品のように画一化できない、これなくして誰も育たない、人間的な営み。

 

「マッチョ」が行き詰まるのは、「自分はケアされて育ったのに、他者をケアした経験がない」という非対称性にあると思います。ならば、男性自身が"ケアする"ことを経験すれば、マッチョは鳴りを潜め、社会がやわらかい方向に変化するのでないかと。

 

5年前にこの記事を読んで、「ケア責任」という考え方を知りました。

 

働く母の「3大・生存戦略」を検証する | 育休世代 VS. 日本のカイシャ | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

 

企業の社長など、意思決定に関わる人は「他者をケアした経験」が乏しいから、ケアを担う人々の気持ちがわからない。社会は「ケア」によってできているのに、その中身を知らない人が意思決定に加わっていて大丈夫?という要旨。僕は、これは素晴らしい視点なので、広まってほしいと思いながら記事を注視していまいしたが、とくに何もなく埋もれていきました。残念でしたが、それもわかります。このメディアの読者の多くがマッチョだからです。

 

とまれ、「ケア責任を負ったことがある人が、意思決定に関わるべき」という考えには、今も強く賛同します。

 

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保育園は、小さい子どもの下の世話から食事、遊び相手、寝かしつけなど「ケア」のかたまり。男子たる者、国家資格を与えられた「プロ」として「仕事」をする以上、「不機嫌」で子どもを怖がらせたり泣かしては失格。「○○ちゃん、できたねー!」とか「○○ちゃん、たのしーねー!」と笑顔全力で言葉がけすることがmissionとなります。これにより「不機嫌なおじさん」が減って、笑顔が身体化した「機嫌よさそうなおじさん」が増えるなら、社会変革とはいえないでしょうか。

 

個人的には、「保育」に加えて、乳幼児の「研究、観察」などのフィールドワークも兼ねると面白そう。「子どもの権利」の教育も、もちろん乳幼児期からやります。さらに、企業等の意思決定に関わる人々に、「ケア責任」をシミュレーションする研修機会の提供も視野に入れたい。

 

実際にやるとなると、様々なハードルが予想されます。そもそも保護者の方は、こんな怪しげな保育園に、簡単に子どもを預けないでしょう。とはいえ、世の中のニーズは多様化しているので、男性ならではのニーズも開発できそうだし、「おじさんに預けたほうが気楽やわ~」という方もいるでしょう。もちろんこんな課題にもしっかり対応していきます。

 

 そして「きずなメール」は、おじさん保育士の学習用(eラーニング)コンテンツ、及び保育園と保護者のエンゲージメントツールとして機能させるとよさそう(^^)  これを機に、保育園にも積極展開しても良いですし…。

 

絵に書いた通りにはいかないとしても、大変さも含めて「おもしろそう」というおじさんの方、ぜひ連絡をー。まずは妄想、もとい夢を語り合いましょー^_^