きずなメール・プロジェクト 代表のblog

顔と名前を出す人生です。

きずなメール ・プロジェクトの真ん中にある「編集」「ライティング」

僕は編集者でした。だからきずなメール ・プロジェクトの真ん中には「編集」「ライティング」があります。これを説明するために、僕が「編集」「ライティング」してきたものを伝えてみます。

* * *

30歳くらいのときに、編集プロダクションから「版元」であるKKベストセラーズに転職しました。「版元」は本を流通のライセンスである「コード」を持っています。編プロにはありません。入社したら月刊誌「競馬最強の法則」編集部に配属されました。希望したわけではなく、おそらく欠員があったからでしょう。


(休刊するときの最終号。このときはすでに僕はいません)

ここで4年ほどやったあと、男性誌の編集部へ異動になりましたが性に合わず、活動して「最強」編集部に戻してもらい、さらに5年ほど在職しました。

「競馬最強の法則」は月刊誌なので、月に1回の締め切り(校了)に向けてすべてが動きます。僕がいた頃は、編集長を含めて5人体制。それぞれが担当ページを持ちます。雑誌は主に「特集」と「連載」で構成され、「特集」の企画に皆知恵を絞ります。編集部に配属された最初の1年は「特集」をやらせてもらえませんでしたが、2年目から少しずつ担当させてもらえました。

ヒット企画を単行本にすることもしました。僕は在職中に単行本2冊とムック(マガジンとブックの中間の形)を1冊つくりました。

 

①最初に作った単行本がこちら。

②2冊目に作ったのがこちら。

③ムックがこちら。

単行本では「競馬本のベストセラー」を目指しましたが、果たせませんでした。重版は数回しました。この3冊には「その後シリーズ化された最初の本」という共通点があります。著者の力でそうなったのですが…。木下さん、ヒノくん、丹下さん、元気かな~(検索すると皆元気そうです)。


* * *

 

単行本は自分の名刺代わりなる仕事として、力を入れてつくりました。力んでつくった①の表紙が黒ベース、②が白ベース。物事を白か黒かゼロかイチで捉えがちな性格の表れです。僕としては「最小限の要素で世界を表したい」「加えるよりは削りたい」。きずなメールのロゴも、「白地」に「黒い線」です。

「テキストメッセージ」へのこだわりも、それが人間が知識や感情を共有する最小限の仕組みだから。人間はこの仕組みのために何年も「教育」して読み書きを教えます。今この瞬間、このブログの「白地に黒い線の羅列」から意味を読み取れるのは、教育のおかげです。

* * *

当時も今も、僕は「競馬ファン」とはいえませんが、競馬は魅力的な学びの「フィールド」でした。業界の構造やガバナンスは人類学のようだし、ギャンブルには確率や統計など、自然科学や心理学の面白さがつまっています。

①の著者である木下さんは、レースを観察する力が凄かった。後に「ファーブル昆虫記」のファーブルが、特別な道具を用いず、ただ「観察」→「仮説」→「観察」を繰り返して学をなしたエソロジー(動物行動学)の元祖と知りましたが、木下さんもこれに近い。競馬のタイム理論(スピード指数)を「レースの緻密な観察」で補正し、実際に馬券を買ってプラス収支になる。「競馬で妻子を養う」とか「走馬眼」などの派手な言葉が飛び交っていますが、本の中心にあるのは「観察」それ自体の面白さだし、アプローチも科学的です。

②の樋野さん(リスペクトをこめてこう呼びます)は、一度見たレースは忘れないというスーパー記憶力と斬新な視点が際立っていて、当時マイナーだった「騎手の人間関係」を「政治力」という「言葉」で構造化して必勝法に取り入れました。

「きずなメール」はこんな「フィールド」を「社会」に広げたものといえそうです。起業時、「わかりやすく社会に役立つ」ことを目指しました。なにもないところから始めるのに、自分のやっていることが、「誰かの役に立っている」とか「喜んでもらっている」実感がないと、続きそうになかったからです。

子ども虐待の予防にフォーカスするのは、子ども以前に、そこに「強い者が弱い者を力で損なう」という普遍的現象が含まれていて、これを無くそうとするアクションはそれ自体が、自分と周りの人々を支えてくれそうだと感じたからです。

競馬の本を通して学んだ「編集」「ライティング」が、きずなメール ・プロジェクトという人の集まりのベースにあります。良くも悪くも、「編集」「ライティング」が団体の限界と可能性です。

* * *

僕がKKベストセラーズにいた頃、「編集」「ライティング」は「内」から「外」に、つまり出版社やメディアが「読者」「視聴者」に向けて「発信」する/されるものでした。今はその「内」「外」の境目がなくなり、シームレスになってきています。「公」と「私」が近接せざる得ない。

「内」の言葉遣い=「外」の言葉遣いです。だから僕は今、団体内の言葉を「編集」しようとしています。「言葉はキレイなる」と言い続けるのも、同じ理由です。

ブレイクダウンすると、「関係」を表す新しい言葉、きずなメール・プロジェクトらしい言葉を見つけて、使っていく必要があります。「読者」との関係を表す新しい言葉も必要です。12年かかってようやく「読者」に辿りつきました。

 

 

ここまでのテキストを、ほぼ寝ながらスマホで書き上げました。「ライティング」の変化です。

いただいたモロヘイヤ。茹でておひたしにしました。

f:id:yukkiestar:20220919114333j:image