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読書メモ: タリバン 復権の真実

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「多様性」「異文化理解」のひとつの方法として、「自分から距離が遠そうな文化に関する本」を読みます。とくにイスラム教は、地球上の5人に1人くらいがこのカルチャーでありながらよく知らないという課題意識もあり、定期的に関連本を読みます。今回はこれです。

アフガニスタンで米軍が撤退しタリバン政権になり、混乱はありましたが、その後日本で報道されることはなくなりました。僕はこれについて、以下のような仮説を立てていました。

「大きな混乱のニュースが日本に伝わってこないということは、生活者に受け入れられているのではないだろうか」

同書は、この仮説を裏付けてくれる内容でした。以下、読書メモです。僕に「観測者バイアス」があることを前提でお読みください。

イスラム教に対する、僕の基本理解】
・神への「服従」が大前提。教徒に、西欧的な意味の選択肢はない。生活規範も含めて「すべてがコーランに記されている」という立場を取る宗教。
・「民主主義」「選択の自由」「人権」などの考え方はない。
・基本的には「国」「nation state」という概念もない。あるのは「ウンマ」=イスラム共同体。
・2大宗派として、預言者ムハンマドの血統を気にしない「スンナ派」と、血統を気にする「シーア派」がある。僕は「血統気にスンナ」と「血統気にシーア」と覚えた。タリバンスンナ派。イランはシーア派

【読書メモ】
・「タリバン」とは「神学生」の意味。「民主主義」の影響を排除したイスラム教神学の学生たちが「ウンマ」を作ろうとする活動、生き方が原点。
イスラム教では「学んで20年、ウラマーイスラム学者)として教えて20年」の伝統がある。現世でウラマーは重要な役割。イラン革命ホメイニ師ウラマータリバンの現在のトップや主要人物もウラマー
・日本の歴史でタリバンを例えるなら、延暦寺などの「僧兵」に近いイメージ。宗教的理想と武力の両方を持っている。
・「タリバン」が世界に知られた2000年前後は確かに過激だった。その後、情報の少ない日本では「過激派」のイメージは根強いが、本書を読む限り、過激派のイメージはない。
・「タリバン」を始めた「神学生」たちが「ウラマー」となって今も政権の中枢にいる。つまり「若い頃は暴れてしまったが、経験を積んでしたたかになってついに政権獲得」というイメージ。
・同書にある、今に至るまでの流れを、誤解を恐れずに要約してみる。
【2000年頃は仏像爆破などやりすぎて、過激派として見られるようになった。だが過激なだけでは続かず、生活者の生活を支える要素があるから継続する。2000年以降、タリバンはその宗教的理想を、アフガニスタンの各地域で地道に根付かせていった。
例えば、警察が腐敗してるときに、僧兵が宗教的倫理にもとづいて裁定したら、どちらが支持されだろうか。
先進国が「政権」として対話していた人々は首都カブールだけにいて、汚職にまみれて生活者からは信頼されていなかった。政権が立ち行かなくなり米軍も出て行って、そこで静かに宗教的理想を時間をかけて根付かせてきたタリバンの主要メンバーが入った】
・日本の報道から感じられるイメージとはかなり異なって見える。
タリバンの論文も翻訳されて掲載されている。それを読むと、「自分たちは過激派と思われているが」的なバランス感覚を伺わせる記述が随所に見られる。同時に、「民主主義はそもそもない」とも明言している。考え方が違うことがわかる。
・同じ倫理を「論理的に考えた結果」か「神の命令」とするかで、世界への眼差しが異なるのだろうと想像する。

…ここまで書いて力尽きました。念のため、関連記事も。

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