「短歌の本だけどなんだか仕事に直結だなあ」と思いながら読んで巻末の解説まで行ったら「この本はただの短歌入門書ではない。短歌入門書の仮面をかぶったビジネス書である。」(P165)とありました。
仕事に直結していると感じた5箇所を、備忘のために引用します。
①昼間のおじさん
ぼくらくらいの年齢の男性が、住宅地にしゃがんでじっとしていますと、30分くらいすると、おまわりさんが来る。多分誰かが通報するんですよね。(P23)
ジェンダーというか、トキシック・マスキュリニティというか。僕はこの問題の当事者です。今でも、小さな女の子に笑いかけそうになると周りから誤解されるのはではないかとためらいを感じます。
②「生きる」と「生きのびる」
全員がまず「生きのび」ないと、「生きる」ことはできない。 僕ら生の行動として、第一義的には、生命体としてサバイバルしないといけない。その一方で「生きのびる」ために「生きる」わけじゃない。けれども、じゃあなんのため? と言われるとわからない。(P26)
「生きる」と「生きのびる」。 - きずなメール・プロジェクト 代表のblogでも引用しました。難しいかもしれませんが、「生きのびる」と「生きる」を、できるだけ近づけたい、一致させたいと思って仕事をしています。
③共感
いきなり共感を目指すと上手く行かない。驚異ってぼくは呼んでいるんだけど、一回ワンダーの感覚に触れてそこから戻ってこないと。ワンダーからシンパシーですね、驚異から共感。砂時計の「くびれ」みたいな驚異のゾーンを くぐらないと 共感をゲットできないという、普遍的な法則があるみたいですね。(P141)
仕事で「共感」を目指してみて大エラーしました。でもまだ試合は続いているので、砂時計の「くびれ」みたいな驚異のゾーンを探しています。
④網の目
いい短歌はいつも社会の網の目の外にあって、お金では買えないものを与えてくれるんです。(P158)
仕事が「テキストメッセージによるセーフティネット事業」なので、業務の中で、「網をかける」「網の目をつめる」という語を使います。これが、生きのこるための言葉か生きるための言葉かはわかりません。
⑤だから短歌
(解説より抜粋)穂村は、効率第一、実務一辺倒でバリバリ働く人生を別に否定したりはしていない。むしろそういう人がいなきゃ社会が回らないと理解している。 しかしそういう人生だけではどうしても見えてこない人生のあり方というものが、この世にはある。仕事をするにあたっては、自分とは違う生き方を送る人々の考えを感知できる能力が必要だ。それができる人間は、今までになかった需要や商機を創り出せる可能性ががある。それができない人間は、異物や弱者平然と排除しようとする危険なモンスターになりかねない。だから短歌がある。(P166)
著者は、生きるために大事なことを、実にヘナヘナした言葉で述べます。僕にマネできなさそうな「ヘナヘナ」にリスペクトを感じます。
世界時計。