きずなメール・プロジェクト 代表のblog

顔と名前を出す人生です。

「12/21 閣議決定 こども政策の新たな推進体制に関する基本方針について」を読んでみた。

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昨年12月21日に閣議決定した「こども政策の新たな推進体制に関する基本方針」に「SNSを活用したプッシュ型の情報発信の充実」という文言が入りました(上図参照)。

きずなメールは設立時から、広くは”孤育て”予防、狭義には子ども虐待未然防止の施策として「プッシュ型情報発信」の重要性を訴求してきましたが、この閣議決定により新しいステージに入ったと判断しています。ついては今後、団体として下記の2点を、改めて広く社会にアナウンスし、理解を求めていく予定です。

①「複数専門家によって制作監修されたテキストメッセージ(※)」はそれ自体が読み手の不安軽減や知識向上につながり、こども虐待の未然防止策として機能すること。
(※きずなメールのことです)
②「プッシュ型の情報発信」は「弱いきずなでつながり続けるセーフティネット」としても活用できること。

きずなメール事業の全体像

合わせて、「こども政策の新たな推進体制に関する基本方針について」を通読したのでそのメモ。以下【 】内は引用、それ以外は僕のメモです。

* * *

・P2【こどもは家庭を基盤とし、】【家庭における子育てを】【こどもを家庭において養育することが困難又は適当ではない場合においては、できる限り家庭と同様の養育環境において】
「家庭」という言葉が連続で出てくる。愛着形成の観点からは「家庭的環境」であるべきではないかと思う。

・P2【Well-beingの向上】、P3【幸せな状態(Well-being)】
英語が出てくる。日本の国語では表せない概念ということらしい。

・P3【 「誰一人取り残さない」は、我が国も賛同し国連総会で採択された「持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」の根底に流れる基本的な理念であり、このアジェンダは、こどもについての取組も求めている。】
SDG’sの「leave no one behind」の概念がここにも。

・P4【多職種の専門家】【(ナナメの関係性)】
僕には馴染みのキーワードが出てくる。

・P4【(5)待ちの支援から、予防的な関わりを強化するとともに、必要なこども・家庭に支援が確実に届くようプッシュ型支援、アウトリーチ型支援に転換】
「プッシュ型」が出てきた。9年前、文京区の子育て支援課長さんが「これからはプッシュ型じゃないとね!」と言っておられたのが懐かしい。

・P4【地域における関係機関やNPO等の民間団体等が連携して、】
NPO」の語が入った。

・P4【SNSを活用したプッシュ型の情報発信やこどもや子育て当事者にとってわかりやすい広報の充実強化等を進める。】
国の政策にこの文言が入ったということは、現実は、次の課題に移行している。

・P5【なお、こどもの健やかな成長にとって、教育は必要不可欠である。教育は、教育基本法(平成18年法律第120号)において人格の完成と国家社会の形成者の育成を目的とする旨が定められており、その振興は文部科学省の任務とされている。文部科学省は、初等中等教育、高等教育及び社会教育の振興に関する事務を一貫して担っており、この教育行政の一体性を維持しつつこどもの教育の振興を図ることは、こどもの成長を「学び」の側面から支えていく上で重要である。このため、教育については文部科学省の下でこれまでどおりその充実を図り、こども家庭庁は全てのこどもの健やかな成長を保障する観点から必要な関与を行うことにより、両省庁が密接に連携して、こどもの健やかな成長を保障することとする。 】
こども家庭庁には本来、文科省の学校教育がそのまま入ってよさそうに感じるが、そう簡単ではない複雑さが現れているような。それにしても、「人格の完成」という言葉に未だ違和感を感じる。誰が「完成したかどうか」を判定できるだろうか。

・P6【地方自治体の先進的な取組を横展開し、必要に応じて制度化していく。】
力が湧いてくる。がんばろう>みんな!

・P6【 ③NPOをはじめとする市民社会との積極的な対話・連携・協働】
NPOの役割への期待を感じる。

・P7(こども家庭庁を)【内閣総理大臣の直属の機関とし】
そうなんだ。
・P7(こども家庭庁の有する権限について)
【①各省大臣に対し、資料の提出や説明を求める権限
 ②各省大臣に対し、勧告する権限】
各省大臣に対し「命令する権限」まではないらしい。

・P8【内閣総理大臣、こども政策を担当する内閣府特命担当大臣、こども家庭庁長官の下に、内部部局として以下の3部門の体制を設ける。】
特命担当大臣」はどんな役割だろう。

・P9【虐待や貧困などの複合的な要因を抱え、居場所がない若年妊婦への支援】【産後うつの予防等】【相談支援等により男性の子育てへの参画】
きずなメールが関わる領域の課題がそのまま出てきている。最後は「男性の子育てへの参画」ではなく「男性も育児当事者である文化の醸成」などが理想。

・P9【こどもの育ちの保証】
「育ち」という語が複数回現れる。浅学だからかもしれないけど、文科省のコンテクストで「育ち」という語はあまり聞かない。「育ち」には「こどもの自発的成長」というニュアンスを感じる。

・P10【施設類型を問わず共通の教育・保育を受けることが可能となるよう、こども家庭庁は、就学前のこどもの健やかな成長のための環境確保及びこどものある家庭における子育て支援に関する事務を所掌する観点から、文部科学省の定める幼稚園の教育内容の基準の策定に当たり協議を受けることとし、文部科学省は、幼児教育の振興に関する事務を所掌する観点から、こども家庭庁が定める保育所の保育内容の基準の策定に当たり協議を受けることとし、これらの教育・保育内容の基準をともに策定(共同告示)することとする。幼保連携型認定こども園の教育・保育内容の基準をこども家庭庁及び文部科学省が定めることと併せ、3施設の教育・保育内容の基準の整合性を制度的に担保する(児童福祉法及び学校教育法(昭和22年法律第26号)の一部改正)。】【通知等は、原則として、こども家庭庁と文部科学省の連名で発出する(こども家庭庁の創設時期にかかわらずできるだけ早期に実施。)】
なんか苦しさが漂う。

・P11【3)相談対応や情報提供の充実、全てのこどもの居場所づくり 
 こどもや保護者等の相談に応じて関係機関の紹介等の情報提供・助言を行う拠点である子ども・若者総合相談センターのほか、子育て世代包括支援センター、子ども家庭総合支援拠点を一元的に所管する  。地域において、これらの相談支援機能が円滑かつ着実に機能を果たし、必要な人に情報や支援が届くよう、こどもや子育て当事者の視点に立った情報発信やSNS等を活用したプッシュ型の情報提供に取り組むとともに、子ども・若者総合相談センターの設置促進と機能を抜本的に強化する。 
身近な場所に親子が気軽に集まって相談や交流を行う地域子育て支援拠点の充実  に取り組む。】
赤字は筆者。きずなメール事業の目指すところが書かれている。

・P12【子ども・若者支援地域協議会  と要保護児童対策地域協議会  の連携が有用である。これらの協議会は、秘密保持義務により個人情報の共有が可能となっている。】
「要対協は個人情報共有可能な会議体」と明確に定義されている。

・P13【要保護児童対策地域協議会を一元的に所管し、有機的な連携を図る。また、現場のニーズや実情を把握しているNPO等の民間団体のこれらの協議会への参画を促進する。】
要対協へのNPO参加に追い風。

・P14【家庭養育優先原則に基づき】
「家庭的養育」ではなく「家庭養育」。違いは何か。

・P14【こどもの声に耳を傾け、こどもの意見を尊重した改善】
子どもの権利条約12条「意見表明権」の効果。子どもアドボケイト。

・P14【子供の未来応援基金を活用し】【マッチングネットワーク推進協議会により】
この基金と会議体がプラットフォームになる、と読める。

・P14【相談に来ることを待つことなくプッシュ型による積極的な相談支援を行うことや、様々な課題にワンストップで必要な支援に繋げることができる相談支援体制を強化する】
「相談」が大事。

・P16【必要な支援を必要な人に届けるための情報発信や広報等

必要な人に情報や支援が届くよう、こどもや若者、子育て当事者が正確でわかりやすい情報に簡単にアクセスできるようにしたり、利用者目線に立って必要な情報がわかりやすくまとまって確認できるような一覧性が確保された情報発信、こどもや若者にとってなじみやすいSNS等を活用したプッシュ型広報、制度や支援についてオンラインで気軽に問い合わせできる仕組みの構築など、情報発信や広報を改善・強化する。】
赤字は筆者。

・P16【こどもの置かれている状況や課題を的確に分析し、現状把握にとどまらず、政策効果を明らかにした上で、エビデンスに基づく政策立案・実践を行う。また、内閣府が令和3年に作成した「子供・若者インデックスボード」を更に充実させるなど、多様なデータを参照して、施策を検証・評価し、改善につなげていく。】
調査、研究、評価するなら「子供・若者インデックスボード」ということのよう。

・P17【5.こども家庭庁創設に向けたスケジュール 
 こども家庭庁は、令和5年度のできる限り早い時期に創設することとし、次期通常国会に必要な法律案を提出する。 】
* * *

現場からは以上です。

写真はベイブリッジハンマーヘッド

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