スタッフから勧められました。著者の杉山文野さんは、トランスジェンダー。女性として生まれましたが性別に違和感を感じ、試行錯誤して、現在は男性、父親として活躍しておられます。
「トランスジェンダー」と書きましたが、僕はこのフィールドの言葉遣いは初めてなので、ドキドキしながら書きました。当事者の方から見ると見当違いないことがあるかもしれませんが、そのときは指摘していただきながら、少しずつ学んでいきたいと思います。
本書を、LGBTQに関する本というより、コミュニケーションについての本として読みました。相手からみると、理解不能かもしれないことを、どうやって理解してもらうか。
僕が息子から、「父さん、僕は本当は女なんです」「父さん、僕は男の人が好きです」といわれて”すんなり”受け入れられるかは、そうなってみないとわかりません。受け入れる気持ちがあっても、”すんなり”は難しいでしょう。
著者もまず自分の親にカミングアウトしますが、”すんなり”とはいきません。でも諦めない。捨て鉢にならず、自分から働きかける努力は捨てず、時間をかけて待つ。わかってくれない、と投げ出さない。絶望しない。無理解な人への理解と敬意は忘れない。怒らない。何年もかけて理解を得る。何年もかけて。こんなふうに振る舞えるのは、著者の個性なのかもしれませんが、頭が下がります。
本書自体が、著者から社会への働きかけです。その働きかけに、僕は心を動されました。子どものとのコミュニケーションに悩むことがしばしばありますが、著者の振る舞い方を見習います。
秋刀魚。