きずなメール・プロジェクト 代表のblog

顔と名前を出す人生です。

読書メモ:選挙に関する小説「情報」(高梨ぽこ)

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久しぶりに小説を読みました。
「情報」 単行本  2015/4/1 髙梨 ぽこ (著)
ネタバレを気にしつつ、仕事のヒントになりそうだと感じた部分を引用をします。選挙カーのシーン。

 清治さんの選挙カーはオルゴールの音を流す。 源清治です!よろしくお願いします! と絶叫する他に、 ただ静かに オルゴールを流しながら街をまわる。選挙はうるさい。 ただうるさいだけではなく、基本的には自己アピール なので 、 耳に障ることも少なくない。すぐ近くを大声で通り過ぎる選挙カーに苛苛したり、同じことを何回も言われてげんなりした覚えが、私自身にもある。そんな市民の声に応え、 あるいは本当に人に伝えるとは何だろうという問いへの一つのアンサーとして、清治さんは前々回 選挙 ( 八年前ということになる)の時に、 オルゴールを流すという方法に辿り着いたらしい。最初は失笑されたのだという。普通に考えれば当然かもしれない。 何故なら、 選挙というのは顔と名前を売ってなんぼ だと思われており、大きな声の人が勝つと思われているから。本当は、本気で街のことを考え、その街のためにどんな政策を掲げているのかが一番の争点になるべきだと思うが、実情はそうではないようだ。だから、 小さな音で静かに選挙をするというのは、首をかしげられても無理はない。しかしそのやり方で、清治さんは見事に当選した。当時の清治さんの体感、つまり肌身で感じる人々の 反応の熱さ、 冷たさ、 あるいはその温度の変化を聞いてみると、数ある当選理由の憶測のうち、 オルゴール絡みのものはいくつか考えられる。①毎日回っている間に、オルゴールの音がするのは源さん、と認識されていった。② うるさくない選挙ということで、 普段大音量選挙にげんなりしている人からの印象がよかった。③選挙期間は 演説調の音響が飛び交っている中、 聞き慣れない オルゴールの音に振り返る人が多かった。結果、「源清治」という名前を見ることとなる。など。 結果としては、斬新さもあり、 有権者の心象に響いたという意味で大成功。以後、 ゴミ収集車がオルゴールを流しながら街を回るきっかけになったとも言われる。

(P109-110)

今、団体内で今年度のアクションを議論していますが、皆で「オルゴールの音」を探しているのかもしれません。それは、一見セオリーに反するアクション、その効果は仮説でしか検証できない、でも結果ははっきり出るというような。

きずなメール事業が継続しているということは、すでに僕らから「オルゴールの音」が出ているけど、それが何がはわからない感じでしょうか。

もひとつだけ引用。

政治家というのは、道徳観とか倫理観とか、そういう抽象的な部分と、現実的で具体的な問題を結びつけていく仕事なのだ。(P32)

こんな感じで、同書を貫く著者の視点、世界観は、僕を励まして、奮い立たせてくれるものでした。本当に。「政治は汚い」なんていう紋切り型で括っている場合ではないです。

 

* * *

選挙用語も知りました。

・「二連ポスター」P61
党首と地元議員の2つの顔があるポスターは、こう呼ぶのですね。

・「公ハ打ち出し」P142
「公選ハガキ」「選挙ハガキ」のなまえで呼ばれる、公職選挙法で規定されたハガキを印刷する
こと。これがあるから「名簿」が大事なんですね。

・確かめたいこと。「情報」という言葉は、

どうやら戦争時に「敵情報知(敵の情況を報せる)」の意味で使われたのが最初らしい。(P100)

だとしたら結構新しいのでしょうか。

・愛市公債(P154)
インフラ整備のため、市民がお金を出し合う仕組みの名称らしい。さらに知りたい。

街に若者が一杯。混じってみました。

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